67日目 世界初?


天気がいいので風を入ようと思い、窓を開けると
セミが入ってきました。
風を入れようと思っていたのにセミが入ってきました。
ボクは突然の来訪者に驚きました。
何に驚いたかって、もうセミがいることに
ビックリしました。
ボクはセミの行方を追います。
セミはすぐに壁に追突して落ちました。
ボクはセミを捕まえて机の引き出しに入れました。
その時、引き出しの中に小指の先ぐらいの筒を見つけました。
透明の筒です。
ボクはひらめきました。
タコ糸を用意して、筒に結びます。
そして反対の糸をセミに結び準備完了です。
後はパイロットが乗り込めば出発です。
さあ、パイロット登場です。
ヘルメットを筒の中に入れてセロテープでフタをします。
ボクはセミの胴体のところをつかんで
窓の外に高く手を伸ばします。
スタンバイです。
いつでもOKです。
秒読み後に発射します。
おそらく世界初です。
空を飛ぶなめくじが今ここに誕生しようとしているのです。
ボクの指の間でセミが激しく羽をばたつかせて、
足をモゾモゾうごかします。
羽はいいのですが、足のトゲみたいなのが
指の皮膚に食い込んでいます。
「イテッ」
発射しました。
秒読み前に発射してしまいました。
ま、そんなことはどうでもよいのですが、
この瞬間に飛行ナメクジの誕生です。
セミのプロペラにより、ゴンドラに乗ったヘルメットは、
風になったのです。
・・・・。
垂直です。
垂直に落下しました。
すぐ救出に向かいます。
窓は2階です。
2階からまっすぐに落ちて、
側溝のフタに引っかかっています。
側溝のフタは鉄の網です。
鉄の網の間にセミは落ち込んでいます。
ヘルメットの乗り込んだ筒は落ちずに
うまく引っかかっています。
筒を取りはずし、セミを救出しました。
「うわぁ~、セミだぁ~!」
男子登場です。
小1ぐらいでしょうか。
「いるか?」
ボクが言うと、
「うん!」
と言うのでタコ糸についたセミを渡しました。
「すげー!ひもがついてる!」
と叫びながら、走り去っていきます。
ボクは遠ざかっていく背中を見つめて、
ちょっと微笑みました。
遠くで小1の男子は、
ピッチャーがボールを投げるような格好をしています。
何度も何度もしています。
どうやら電柱に叩きつけているようです。
「無邪気だな」
ボクはそう思うのでした。