110日目 大勝負


ナメクジを見る前に、
気になって仕方がありません。
だから今日、ボクは大勝負をします。
一世一代の大勝負です。
この勝負に勝つか負けるかは、
すべてボクの演技にかかっております。
ボクは今日、アクターになるのです。
1日アクターです。
「すみません」
さぁ、始りました。
ボクはちょっと、はぶてた感じで言います。
「はい」
と店長が言います。
「これ折れてました」
ボクは箱をカウンターに乗せます。
「え?」
店長が不審な顔をしました。
マズイぞ!ここで引いてはいけない!
よし!いっきにたたみかけるんだ!
「これ、メスの先が折れてました」
ボクは被害者の絶望的な顔を見せ付けます。
ここで店長は事態を理解しました。
「あ、そうですか。
 申し訳ありません」
ちがう。
違うゾ。
その目は疑っている目だ。
お前が自分で振り回して折ったんだろ。
の目だ!
ま、負けるな。
「困るんですよね、
 メスがないと・・・」
ココ、学者風ね。
学者が論文発表に間に合わない緊迫感を出します。
「申し訳ありません
 すぐお取替えいたします」
店長はあやまります。
しかし平謝りの色が濃いです。
けど、ボクは、
勝った!
勝ったゾ!
と喜びながらも、
顔には出さずに、
「お願いします」
と言います。
すると、店長が、
「あの~、ですが、
 こちら、お取り寄せになるんですが・・・」
と申し訳なさそうに言いました。
というより、
あんた、こんなもんでナニ見るんだよ。
メスなんかでナニ切んだよ。
もっと他にする事あるだろ。
の空気が流れました。
ボクは、
な、なんだと!
という雰囲気で、
「早急に欲しいんですが、
 なんとかなりませんか」
と言います。
そしたら店長が、
「ピ、PK-100ならあるんですが・・・」
と言います。
ボクは、
「それでいいです」
と言います。
店長が、
「へ?」
と目を大きくします。
ボクは、
「100でいいです」
と、もう一度いいます。
すると店長は、
「え?でも、こちら、
 メスが付いておりませんが」
と矛盾を突くようなことを言い出したので、
「こっちは急いでるんです
 それでいいから交換してください」
と打ち消します。
「は、はい。では」
と言って100に交換します。
ボクは、
ここではじめてニヤリとしました。
もちろん心の中でです。
そして、差額の1000円をもらいました。
PK-100も手に入れました。

完全勝利です。