117日目 リターン


今日は子供たちを解放します。
だいぶ大きくなったので、
自然へと旅立たせるのです。
子を思う親の気持ちです。
「育てるの、めんどくせぇだけだろ」
とか言うな!
そうよ、その通りよ。
めんどくさいのよ。
でもボクは、全員を野に放ちません。
なぜなら、ヘルメットだけになるからです。
ヘルメットには、ベルが必要なのです。
だから、選びます。
今回は、キュウリを用意いたしました。
そしてダンボールもあります。
ダンボールにゴールドブレンドをひっくり返します。
ゴールドブレンドに入った子供たちが、楽しそうに、
ドロ~
と出てきます。
フタの内側に、へばりついている子供もいます。
ボクは振ります。 出てくるまで振り続けるのです。
でも粘着力が強いので、出てきません。
ボクは、ガラス棒でかき回します。
数匹つぶれましたが、なんとか取れました。
ダンボールに子供たちの小さな山ができました。
その山から5センチほど離れたところに、
キュウリを置きます。
そしてボクは見守ります。
最初にたどり着いた子供が優勝です。
2分ほど見守りましたが、
ぜんぜん動こうとしません。
「この忙しいときに」
ボクはそうつぶやいてテレビをつけます。
テレビの前に、
ダらぁ~、
と横になり、鼻クソをほじくります。
かなりスピーディに、
それでいて正確に、ほじくらなくてはなりません。
なぜなら、おうちゃくをすると、鼻血が出るからです。
そうして1時間がたったので、
子供たちを見てみると、
キュウリにへばりついております。
おお、
これでは、誰が一番かわからないぞ。
もう一度、最初からやり直しだ。
と、ボクがそう思ってよく見ると、
ほとんどの子供たちが、へばりついている中、
5匹だけ、今までいた場所にいました。
よく見ると、そのうちの4匹はすでに息絶えております。
ゴールドブレンドの蒸し熱さに耐えられなかったのでしょう。
その中に1匹だけモゾモゾと動いている子供がいます。
しかも、みんながいるキュウリとは反対に向かっているのです。
ボクは、この無鉄砲さに心を打ちのめされました。
ダンボールを真ん中から切り離します。
キュウリに群がった子供たちと無鉄砲な一匹とを分けました。
そしてボクは、キュウリに群がる子供たちを
外に連れ出しました。
それを庭のすみに置きます。
これからの子供たちの運命は神のみぞ知るのです。
だからボクは、神さまに後をまかせて、部屋に戻ります。
もう片方のダンボールに残っている、
無鉄砲な子供をガラス棒の先に取ります。
そしてボクは、ヘルメットの水槽に入れました。
無鉄砲な子供は枯葉の上にポタッと落ちました。
体をゆっくりと回して前進を始めました。
「おかえり、ベル」
ボクはニッコリと微笑みました。