120日目 サンダル2


ブルルン。
ボクは今、駐車場に車をすべり込ませましたよ。
クツ屋さんです。
ここでサンダルを買うのです。
なぜなら、サンダルが引き裂けたからです。
サンダルが引き裂けたので、まだ土を入れ替えておりません。
ボクは意地でもサンダルをはいて土を替えるのです。
そう決めているからです。
ボクは車を降ります。
となりのワゴンから車イスの少年が降りています。
お母さんが、かかえて降ろしています。
大変そうだったので、ボクはちょっとだけ手伝いました。
「ありがとう」
と少年が言いました。
ボクは笑ってうなずきました。
そこへ、
ブロロロロ!
バイクがやって来ました。
ふたり乗った、大型バイクです。
アメリカンです。
ふたりの青年がバイクから降ります。
腰には、カギが沢山ついています。
歩くたびにジャラジャラいいます。
ふたりの青年は、
「チッ、どけよ」
と言って車イスの少年のタイヤを蹴ってクツ屋に入りました。
「なんてことするんだ!」
とボクは言おうかどうか迷いました。
なぜなら、ボクには関係ないからです。
もめ事は、ごめんだからです。
ボクはクツ屋さんに入ってサンダルを選びます。
いっぱい種類があるので、かたっぱしから履いてみます。
足にフィットしなければ意味がないからです。
足の裏の土踏まずに、ガチッとこなければ、
ぜんぜん納得など出来ないのです。
ボクはまるでクツ職人の形相で、
サンダルをあらゆる方向から見ます。
底の溝の形状とか見ますよ。
「通れねぇだろ!」
とか大きな声がしました。
どうやら、車イスの少年が通路にいて、
ふたりの青年が通れないようです。
でもボクは今、サンダル選びに夢中なので、
どうでもいいです。
と、その時、
ボクは抜群の履き心地のサンダルを見つけました。
早速、レジに向かいます。
その途中、通路を横目で見ると、
ふたりの青年がまだ少年に、なんか言っています。
「だいたい、車イスなのに、何でクツがいるんだよ!」
「そりゃそうだ!うっひゃひゃひゃ!」
とか言っています。
車イスの少年とお母さんは、だまって下を向いていました。
ボクは、
「お前ら、いい加減にしろよ!」
と言おうとしましたが、
抜群の履き心地のサンダルを手にしているので、
さっさと、レジに向かいます。
680円です。
ボクはお金を払って、クツ屋さんから出ます。
出てすぐの所で、ボクはしゃがみ込みます。
そして、小石を2個拾いました。
なぜなら、車イスの少年は歯を食いしばっていたからです。
本当に小さな小石です。
ボクは、大型アメリカンパイクのタイヤのキャップを外します。
そして、タイヤのキャップに小石を入れて、
もう一度閉めなおします。
プシューー
といって空気が抜けはじめます。
ボクは、前タイヤもします。
なぜなら、車イスのハンドルを持ったお母さんの手が
ふるえていたからです。
プシューー
OKです。
これで、オーケーです。
こうすることで、足の不自由さを体験させるのです。
身を持って、体験させるのです。
「て、てめぇ!おら!何しよんじゃぁ!」
バレました。
ふたりの青年は、何も買わずに出てきたようです。
ボクは、エサを奪った子ザルの動きで、駐車場を
ジグザクに逃げます。
モンキーステップです。
「このヤロウッ!」
ふたりの青年は、そりゃもう必死です。
でもボクも必死です。
ボクは、音をたよりに距離をはかります。
ふたりの青年は、腰に必要以上のカギを付けているので、
ジャラジャラという音が、やかましいほどに鳴るのです。
ボクは、ちょっとした崖とかに登ります。
「下りてこい!キサマ!」
とか叫んでいますが、
のこのこ下りていくバカではありませんよ。
ふたりの青年が追いかけてこないのを確認して、
ボクは、木々の中に姿を消します。
ふてきな笑みを浮かべて。
とか思って、ハッとしました。
「車・・・」
そうです。
車をクツ屋さんの駐車場に置いているのです。
その駐車場には、
空気の抜けた大型アメリカンパイクもあります。
ということは、激怒した青年二人組みもいるわけです。
ボクは、待つことに決めました。
だから5分待ちました。
様子をうかがいに行きます。
誰もいません。
ふたりの青年はバイクを押して、
ガソリンスタンドにでも向かったのでしょう。
不自由というものを身を持って体験中なのです。
ボクは車にかけより、すぐさまエンジンをかけます。
ふと、となりのワゴンを見ると、少年が乗っていました。
運転席のお母さんが頭を下げます。
ボクは、笑ってうなずきました。
少年は照れくさそうにしていました。
「おい!おったぞ!あそこやっ!」
叫び声が聞こえました。
どうやら、どこかに隠れて様子をうかがっていたようです。
奴らのが、一枚上手なのか!
俺は、のこのこ出てきたバカなのか!
ボクは、車を急発進させます。
その時、チラッとワゴンを見ました。
少年が少し微笑みました。
いや、見間違えかもしれません。
でもボクには、微笑んだように見えました。
ボクは、ハンドルを握り、ニンマリと笑いました。
なぜなら助手席に、サンダルがあるからです。
これで土の入れ替えが出来るのです。
待ってろ、ヘルメット、ベル!