127日目 フィルム


これから夏がやってきます。
すると窓から西日が入ってきます。
その西日は、ヘルメットとベルの水槽に、
直撃します。
だからボクは窓ガラスに、フィルムを貼ります。
フィルムとは、よく車に貼ってあるアレのことです。
西側の窓ガラスは、けっこう大きいです。
この窓に今からフィルムを貼ります。
選んだフィルムは黒色です。
黒は紫外線を最も防ぐからです。
それに安売りのコーナーには、黒しか無かったからです。
ボクは水スプレーに中性洗剤を溶かした水を入れます。
それを窓に吹き付けます。
そして、フィルムを貼っていきます。
ボクはかなり、うまいです。
いたる所に、空気とか入ったりしてます。
なんか、毛とかも入ったりしてます。
でもボクは、そんなことどうでもいいです。
なぜなら、このフィルムで紫外線が防げるからです。
太陽熱も防いだりする、いかした奴だからです。
何よりこれが、大事です。
この太陽熱により、水槽の水が蒸発するのです。
と同時に、ヘルメットとベルも蒸発するのです。
ナメクジにとって乾燥は死を意味します。
だからボクは今、
フィルムを貼っているのです。
ガラス窓は4枚あります。
全部貼ります。
空気のブツブツだらけです。
ヘラで空気を押し出します。
すると、必ずといっていいほど、
やぶれます。
二等辺三角形に、
やぶれます。
だからボクは、途中であきらめました。
なぜなら、ここまでで、
そうとうな時間がかかったからです。
汗まみれになってヘラをなでくり回すのです。
やったことがある人はわかるはずです。
初めてフィルムを貼る大変さを・・・
ちょうど、西からの夕日が入ってきました。
ボクは、窓を開けたり閉めたりして、
効果を体感します。
ボクは、63パーセントの満足感で、
シャワーを浴びに行きます。
パンツ一枚で部屋に戻ると、夕日はほとんど沈んでいました。
ボクは部屋の照明をつけます。
するとどうでしょう。
なんとそこには、巨大な鏡が現れました。
ボクはすぐに、CDのスイッチを入れます。
「キュアー」が入っていたので、それをそのまま流します。
♪♪~♪♪♪
ボクの右肩がリズムを刻みはじめました。
♪♪~♪♪♪
さりげなく開いた口から、
完璧なヒアリングの鼻歌英語が出てきました。
♪♪~♪♪♪
そしてボクの両膝にビートがつらぬいた時、
この部屋は最高のステージと化しました。
今、この巨大なミラーの中には、
パンツ一枚の男が、ロボットダンスを繰り広げているのです。
「小さく前にならえ」
の手で、かかとを使って45度ずつ向きを変えたりしています。
上半身を前後に、
ガックン、ガックンさせます。
かなり、上唇がとがってますよ。
必死です。
ムーンウォークもします。
うしろに下がるだけです。
巨大な鏡の前を、行ったり来たりします。
何十回も繰り返します。
手はもちろん、
「小さく前にならえ」
です。
ときどき全部の指を交互に素早く開いたりもします。
そしてボクは、20分間のステージを終えたとき、
ふと思ったので、
ジャージを着て、外に出ました。
すると、
・・・・。
丸見えです。
下から見上げると、
ボクの部屋の中が、
丸見えです。
ボクの20分間のロボットダンス・ステージは、
今ここに、
本物になったのです。
・・・・。
見た人は、きっと夕飯時に、
「あのね、今日ね、パンツ一枚で踊り狂ってるバカ見たよ」
「そうか、はっはっはっ!」
と話がはずんでいることでしょう。
一家だんらんは、いいですね。