151日目 大地の震動


今日ボクは、ヘドロ号に乗ってサイクリングをします。
もちろんヘルメットもいっしょです。
ハンドルの接合部分にアクリルケースを縛りつけています。
この中にヘルメットがおるのです。
タイヤから伝わる大地を、
地球を感じていただこうということです。
「感じるんだ、ヘルメット!」
さぁ、出発です。
ボクはヘドロ号に、またがろうとします。
しかし、それどころではありません。
なぜなら、選挙のポスターの前に、
スーツ姿のおっさんがいたからです。
スーツのおっさんは、
選挙ポスターから1メートルぐらい離れています。
でも両手に双眼鏡を持って、見ているのです。
選挙ポスターの笑っている人の顔を
双眼鏡で見ているのです。
これはタダゴトではありません。
ボクはヘドロ号を押して、
おっさんの横をゆっくりと通ります。
なぜだ!
なぜ、その至近距離から
双眼鏡で見なくてはいけないのか!?
とか思いながらボクは、おっさんの横顔を見ようとします。
そしたら、ボクの左足が、溝に吸い込まれます。
「っほぉあ!」
と言いながらボクは、バランスを失います。
---スローモーション---
口と目を開け放った男が、
自転車を持ったまま斜めに倒れてゆきます。
溝の水には、細く赤い糸ミミズが、うようよいます。
その中に左足が吸い込まれます。
その水の下には、ヌメヌメのドロがあります。
そのドロが左足全体を包み込みます。
・・・・。
要するに、ドブ。
簡単に言うと、ヘドロですわ。
ボクは、左足をヘドロにめり込ませ、
その体にはヘドロ号が乗っかっとるわけです。
ボクは自分がタダゴトではない自体におちいった現実に、
叩きのめされます。
だけど、そこに目の当たりにしたのは、
双眼鏡で覗くおっさんです。
こっちを見とるのです。
2メートルも離れていないのに、
双眼鏡で見とるのです。
すると、おっさんは、
「大丈夫?」
と双眼鏡で見ながら言います。
ボクはもう、何が何だかわからなくなりました。
そして出てきた言葉が、
「だいじょうぶ、だいじょうぶ」
・・・・。
大丈夫じゃないです。