152日目 野生と本能


ボクは水槽の土に、霧吹きで水をかけます。
なぜなら湿気がないとヘルメットは、
死んでしまうからです。
ヘルメットにとって水は命なのです。
だけど、水があるのでボウフラが湧きます。
蚊が飛ぶのです。
寝ている時に、
ミィィィィィ~~~
とかいう音が、
だんだん大きくなったりします。
するとボクは、
目を閉じたまま両手を顔の前で、素早く動かします。
そのやり方はこうです。
両手でヒジを曲げて「11」を作ります。
(この時に指先をしっかりと伸ばすのがコツ)
そしてすぐ「×」にします。
それを素早く繰り返すのです。
すると、
ミィィィィィ~~~
とかいう音が、遠ざかります。
見事に追っ払うことに成功です。
そしてボクは、ふたたび夢の中へと歩き出します。
・・・・。
痒。
ほお骨の所に痒みが走ります。
と同時に、
左手の中指にも痒みが走ります。
そうなるとボクはもう怒りが込み上げてきます。
眠たいのを邪魔されるのは、
動物の本能を呼び覚まします。
人間は野生を捨てて理性を得ました。
でも、眠たいのを邪魔されると、
捨てていた野性が蘇るのです。
ボクは振り回します。
枕をブンブン振り回します。
枕を振り回しても、蚊は容易くよけているでしょう。
だけど理性を失った野生児に、
そんなことは理解できないのです。
ボクは枕を振り回します。
ガシャーン!
暗闇に破裂音がとどろきます。
枕が当たって何かが落ちます。
だけど理性を失った野生児に、
そんなことは理解できないのです。
ボクは枕を振り回します。
ガシャーン!
また暗闇に破裂音がとどろきます。
・・・・。
でも、いつの間にか寝ているもんです。
そして、朝、目が覚めるというのは、
理性が目覚めるということです。
棚から、あらゆる物が転げ落ちてクラッシュした現実が、
そこにはあるのです。