157日目 白と変眼


ぐねぐねになった発泡スチロールがあります。
これは地面です。
これを水槽に入れて、
ヘルメットがもっと楽しく生活できるようにするのです。
ボクは、空いている60センチ水槽に発泡スチロールを入れます。
(今ヘルメットは30センチタイプで生活しております)
ナメクジは体のほとんどが水です。
だから水も必要です。
ジオラマで水といえば、そう、
石膏(せっこう)
です。
美術室にある西洋人の顔。
あれが、石膏です。
その石膏で水を作るのです。
それがジオラマ。
そう信じます。
ボクは、さっそく洗面器に、
2キロ550円の石膏の粉を入れます。
全部入れます。
洗面器すれすれまで、石膏の粉が入ります。
巻き上がった粉が、鼻にも入ります。
ボクはこの粉が、アスベストでないことを祈ります。
水いれます。
ジョーロで入れます。
少しずつ入れます。
なぜなら水の量で仕上がりが変わってしまうからです。
ゆっくりと棒で混ぜます。
石膏はデリケートなのです。
と、その時、
石膏が固まりはじめました。
ボクは、
「棒じゃだめだ、間に合わない」
と思ったので右手を入れます。
グニョグニョ、右手で混ぜます。
左手のジョーロで水を足します。
右手で混ぜると、洗面器がグルグル回るので、
両足の裏で、洗面器をはさんでおります。
その光景はまさに職人。
そうそこは、
職人の聖域に達する空間。
匠の技。

-----ナレーション-----
軟体生物飼育暦1年半。
男は飼育環境改善のため、
石膏に挑む。
今、ここに、
匠あり・・・
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です。
ボクは、かなりリズミカルに右手を回転させております。
ジョーロのタイミングもバッチリです。
石膏で水を作る場合は、少しゆるめに練るのがコツです。
なぜなら、そう思うからです。
とか思う間もなくボクは石膏を、
流し込みます。
水槽の底半分に入った、グネグネ発泡スチロールの横に、
流し込みます。
ドベドベどべ。
石膏入ります。
ボクは右手をうまく使い洗面器の石膏を残らず入れます。
こさいで入れます。
流し込んだ石膏の表面を手のひらで、やさしく触ります。
ポンポンとはじく様にすると、
波が立った様になったので、
ボクは満足します。
後は、石膏が乾くのを待つのです。
そしてボクは、すぐに手を洗いにゆきます。
ジョーロに残った水を庭にまきます。
ボクは、名も知らぬ草にも、水をかけてあげます。
「おいちゃん、何しよん」
自転車に乗った、名も知らぬ少年が言います。
この、おっさん呼ばわりした通りすがりの少年は、
誰がどこからどう見ても、
『ジョーロで雑草に水をかけている男』にむかって、
「何しよん」
と言います。
子供は分かっていることでも、
「何しよん」
と言って気を引こうとします。
それが奴らの手口です。
だけどボクは、やさしく答えてあげます。
「見れば分かろーが」
そしたら少年の目が、
殺人鬼を見る目に変わります。
子供って無邪気だなぁ。