158日目 波と白泡


「30分で固まります」
と、袋には書いてあります。
が、
石膏というのは、なかなか乾かないものです。
「石膏で水を作る場合は、少しゆるめに練るのがコツです」
とか言って、ドベドベ水を入れたのがよくなかったのでしょうか?
それとも、早く乾かそうと外に置いて雨に打たれたからですか?
雨に打たれたぐらいで、へこたれてはダメです。
なぜなら、石膏で水面を作っているからです。
水が水に負けては、なんにもならないのです。
でも、だいたい乾いたので、
ボクは塗ります。
真っ白の石膏に、色を塗って、
あたかもそこに水があるかのように演出するのです。
そう、
それが、ジオラマ。
ガチャガチャ
ボクは持ってきましたよ。
コンプレッサーです。
「コンプレッサー?何よ?」
とか思うよね。
でもボクは説明とかしません。
先に進みます。
・・・・。
・・・。
あのね、簡単に言うと、あれです。
トラックとかバンのボディに描いてある絵。
龍とか浜崎あゆみとかミッキーマウスとかです。
写真みたいに描いてある絵です。
最近では、携帯電話とかに描いてある絵。
あれ。
あれが、エアーブラシで描いてあるのです。
エアーブラシは、コンプレッサーという機械から空気を出して、
絵の具を吹き付けるものです。
スプレーの細く描ける機械です。
え?
何でそんなもんがあるのかって?
それはあるからです。
この家にあるからです。
だからボクは引っ張り出してきたわけです。
ボクはコンプレッサーのスイッチを入れます。
ポカポカポカ
とかいってコンプレッサーが動きだします。
ボクは、ボールペンに小さなバケツがついた様な
エアブラシを握ります。
小さなバケツの中に青色の絵の具を入れます。
そして噴射。
プシューー
おお。
つきよる。
青い色がつきよる。
プシューー
どんどんいきます。
プシューー
全部塗ります。
水槽の中にある石膏がみるみる青くなっていきます。
水槽の上空から吹き付けているので、
横のガラスにも青い色がつきますが、
OKです。
よく見ると、発泡スチロールの下に石膏が流れ込んで、
ななめになっております。
でも、
OKです。
プシューー
OK。
ボクは、仕上げに移ります。
今度はエアーブラシに白の絵の具を入れます。
水面の波は白いからです。
空気の泡で白く見えるから、それを描くのです。
細かな描写が命です。
そうやって、本物に近づける。
それが、ジオラマ。
そう信じます。
プシューー
石膏の表面のとんがった所に、 プシューー
どんどんいきます。
プシューー
プシューー
波を作るのです。
プシューー
プシューー
全部塗ったら、小さい富士山がいっぱいできたので、
ボクは、
センスねぇなぁ。
と思いました。