163日目 3分前


ボクは石をひっぺがします。
近所の土手の石を
ちょっと、はぶてた感じでひっぺがします。
なぜ、はぶてているのかというと、
3分ぐらい前のことです。

ボクはウキウキ気分で歩いていました。
ズボンのポケットにはビニール袋があります。
このビニール袋にヘルメットを入れて、
家に連れて帰るのです。
ニュー・ヘルメットです。
だからボクはウキウキ気分で歩いていました。
すると土手に石を見つけました。
その石は、いかにもナメクジ、
いや、ヘルメットが好きそうな風格で、
ドッシリとかまえておるのです。
絶対にヘルメットがいる!
そう確信したボクは、
土手の石に向かって足を踏み出しました。
にゅみょ。
ってきました。
ひだり足に、
にゅみょ。
ってきました。
ボクは久しぶりに味わう感覚に、
絶望します。
小学生の時に、イヤというほど味わった感覚に、
絶望します。
犬がガマンしきれずに脱糞しとるわけです。
山の主を追う追跡者に言わせると、
「これは1時間も経っていない。
 奴はまだ、・・・そばにいる」
の感触です。
続けてボクは、時間差で襲ってくる悪臭に、
鼻をマシンガンで連射されます。
ボクは戦わなければなりません。
ここは戦場。
地雷を踏んでしまった者の宿命。
そう、
ボクは土と草に、ひだり足をかなりのスピードで、
こすり付けます。
前後にすべらせます。
自然に両手も前後に振っています。
野外ルームランナー(パントマイム風)
です。
すぐ後ろの道を車が2台とおり抜けたところで、
ボクは動きを止めます。
これ以上やると、恥ずかしいからです。
「あ、見て見て!
 あいつ犬のクソふんで、草にこすりつけよる!」
です。
そんな屈辱はこれ以上たえられないのです。

そしてボクは、石をひっぺがします。
ボクの足もとから、脱糞臭がただよってきます。
だからボクは、ちょっとはぶてた感じで、
石をひっぺがします。
ササッと、
だんご虫が逃げ去って、
ボクはニッコリほほ笑みます。
ヘルメットが、ゆっくりと顔を上げました。
「おかえり、ヘルメット」