166日目 クールビューティー


ヘルメットは、いっつも冷静です。
ふぅー、ふぅー
と息を吹きかけても、
水槽を
ガタガタガタ
とかゆらしても、
冷静です。
クールです。
クールなヤツです。
だから今日はもっとクールなヤツになってもらいます。
ボクは、カッターを取り出します。
そして、けずります。
そう、
フリスクをけずるのです。
スペアミント味タイプです。
青い字のヤツです。
これ、
粉末にして、ふりかけるのです。
するとヘルメットは、
もっとクールになれるのです。
だからボクはけずります。
ガリッガリッ、
と、けずるのです。
けっこう、はじけ飛ぶから、
苦労します。
机の上でけずっているので、
フリスクのかけらが、横のキーボードの
「G」と「H」の間にひっかかって、
それを取ろうとすると、中に落ちてゆき、
ボクを悩まします。
そんな感じ。
で、
フリスクを5個けずったところで完成です。
何がどう完成なのかは、知りません。
ただ、人差し指でカッターの背を押させているので、
痛くて、やってられないから、
ここで完成なのです。
そしてボクは、おもむろに、
カッターの刃を外します。
カッターの刃で、散らばったフリスクの粉を
かき集めます。
ちょうど、ナメクジが伸びた感じに集めます。
5センチ伸びた感じです。
ボクは、カッターの刃で集めた粉を見て、
「まるで、麻薬だな」
そうつぶやきます。
ボクは、
・・・・
しばらく考えます。
そうです。
どうしても、やらなければならないのです。
いや、やるべきです。
そしてボクは、持ってきましたよ。
ストロー。
やってみますよ、これ。
吸い込んじゃいますよ、
鼻で。
スコーん
と、吸い込んじゃいますよ、ボクは、
鼻で。
ボクは、何度か練習します。
なぜなら、吸い込むと同時に、
鼻にストローを差し込んだまま、
顔を横にずらさなければならないからです。
そうしなければ、全部吸い込めないのです。
ボクは何度も練習します。
本番前に素振りをするプロゴルファーのように。
イメージ。そう、
イメージトレーニングです。
そして、意を決したプロゴルファーは一歩前に出ます。
鼻にストローの一番ウッドを差し込み、
片方の鼻の穴を指でふさぎます。
ストローの一番ウッドが、
5センチに伸びた白い粉末ナメクジの頭を正確に捕らえます。
「静かに」
のカンバンが見守る観客に向け、上がります。
息をのむ。
まさにその言葉が観客の脳裏をよぎった、その瞬間、

しゅスーーーーーッ!

男の吸引音がこだました。
男は一気に吸い込み、
正確な角度で頭を振った。
卓上の粉末は、半透明の円柱を
龍のごとく駆け上がる。
鼻腔という名の天に向かって・・・

「はぉゴっ」

男はそう言うと、両目の眼球が裏返り、
鼻の奥にストローを突き挿したまま、
イナバウアーを決める。
眉間の奥深くに痛烈なショックを受けた男は、
右ほほを痙攣させ、遠のく意識の中、
クールに、こう思った。

「なぁ、やっぱりよ・・・、
 フリスクは・・、舐めるもん・・だぜ・・・」